今週はこんな本を読んだ

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zoom RSS 今週はこんな本を読んだ bR77 (27.7.26) 「アクロイド殺し」

<<   作成日時 : 2015/07/26 18:20   >>

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今週はこんな本を読んだ bR77 (27.7.26)

「アクロイド殺し」  アガサ・クリスティー 羽田詩津子訳  早川書房 2011年11月十三刷 885円

「そして誰もいなくなった」を読み終えて、今まで味わったことのないような一種のショックのようなものを経験した。
この際だからもう一冊くらい続けて読もうか、と本屋に行った。次はどの一冊にしようか、と棚を見渡したところ、白い腰巻に青字で「週刊文春臨時増刊 東西ミステリーベスト100[海外編]第5位」とあるのを目にして、迷うことなくこの一冊と決めた。

名探偵ポアロが登場する。
英国で探偵としての地位と名声を確固たるものにした後、探偵業を引退しカボチャでも栽培しながら隠遁生活をおくるためにキングズ・アボットという小さな村に来たところから物語は始まる。
「異様なほど黒い髪に部分的に覆われた卵形の頭、一対の巨大な口髭、油断のない眼。われらが謎の隣人、ポロット氏だった」と、第一印象が紹介されている。英語読みでは「ポロット」になる。
ポアロは「スタイルズ荘の怪事件」で探偵としてデビュー、元ベルギー警察の捜査員で卵形の顔とピンとたつた口髭が特徴の小柄なベルギー人である。二作目のこの作品ではもう既に名探偵であった。
BSの「名探偵ポアロ」を欠かさず観てきたので、デビット・スーシェの表情、姿かたちが浮かび上がり、言葉は熊倉一雄の声になって聞こえてきた。
私は、これまでに映画化された二作品を観てきた。「オリエント急行殺人事件」ではアルバート・フィニー、「ナイル殺人事件」ではピーター・ユスチノフがポアロを演じたが、最近の印象の方が強くなるせいか、どうしてもポアロ像はスーシェを描いてしまう。

「イギリスは大変美しい国ですね」ポアロは風景をあちこち眺めながらそういってにっこりした。「それに、イギリスの女性も美しい」という一節があったが、褒め言葉としても信じられない感想である。
一年中雨か曇りで陽が差す日はめったにない。食べ物は不味いし第一女はみんなブスばかりだ。だからイギリスの男たちは自分の足で歩けるようになったら、とにかく外に、この島国の外に出ようとした。南アフリカでもエジプトでもアラビアでもインドでもオーストラリアでも、とにかくこの地を離れたかったのだ。さんさんとした太陽の輝きがあり、うまい食べ物があり、うまい酒があり、そして何よりもいい女のいるところへ。
そういえば、ベルギーという国は東欧のなかでもブスばかりの国、ということで高名だ。ベルギーの女ばかりを見てきたポアロの眼には、イギリスの女も美人に見えたのだろう、などと考えると、まさにこの言葉こそがアガサ・クリスティーの皮肉であることに気付くのだった。

この作品が刊行された当時から、探偵小説としてルール破りではないか、という論争になったことを笠井潔が「解説」に書いている。
私には一向に気にならなかった。読み進めながら、最後の「弁明」の章の前まで、「この人が犯人でなければ良いが」と思いながら読んだ。読者にそう思わせることが、「探偵小説」としての完成度ではないか、と思う。
私にはむしろ、次の一節のことの方が気になってしまった。
「しかも、その人物は、この国よりも“スノウ”の吸引がはやっている太平洋の向こうで、その習慣にそまったのだろう」、とポアロは言う。大陸で生まれ育ったベルギー人が、イギリス人との会話の中で<アメリカ>を説明するのに、「太平洋」の向こう側、という説明の仕方はしないと思うのだ。
リヴァプールから「大西洋」に出るとボストン、ニューヨーク、フィラデルフィアは眼の前だが、「太平洋」となると、リヴァプールを出航して大西洋を南下しイベリア半島を回り込みジブラルタル海峡を通過、地中海、スエズ運河、紅海を通ってやっとインド洋に出る。そこから航路を北側にとってマラッカ海峡を通過して南シナ海、ルソン海峡を通過してやっと太平洋に出られる。アメリカ大陸はまだその先だ。地球をたっぷり四分の三周してやっとアメリカ西海岸に達するのだ。
リヴァプールからアメリカ行き客船の給仕、という人物のことも出てくる。普段の会話でもアメリカという国の場所は「大西洋を渡った眼の前」という理解がされているのではないか。
誤訳か誤植か、あと十歳ほど若かったら原典を調べようとしたかもしれないが、今は疑義だけを申し添えておくことにする。

時間のたつのを忘れるように読んだ。小説の持つ面白さ、探偵小説の面白さを十二分に堪能した。登場する人物の不可解な行動に隠された大きな意味、時々に配置された小さな小物の持つ大きな意味、人間の業のようなもの、そして何よりも「謎」の解明、すべてが合理的に、必然的に明らかになるのだ。
この体験は<クセ>になりそうだ。

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『名探偵ポワロ「アクロイド殺人事件」』 2000年イギリス
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2018/07/11 21:07

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