今週はこんな本を読んだ №232 (24.10.14)

今週はこんな本を読んだ №232 (24.10.14)

「裁判百年史ものがたり」 文春文庫 夏樹静子 660円 12年9月初版

つくづく、本を読んでいくということは何かがどこかで繋がっていくことだ、ということを実感した。
№230で「高木彬光」という名前を書いて、その少し後に本屋で夏樹静子の著者名を見て、高木彬光の「邪馬台国の秘密(カッパノベルズ)」のことを思い出し、つい買うつもりの無い本を購入してしまった。
「邪馬台国の秘密」は何年前に読んだのだろうか、ネットで検索して見ると、昭和54年(1979年)の刊行になっていた。私が「読書録」を書くようになるその以前のことだ。
名探偵神津恭介が入院中のベッドの上で、誰でもが手に入れることのできる情報だけで、「邪馬台国」にたどり着く、という「古代史推理もの」の先鞭をつけるような一冊で、その手法の斬新さにドキドキしながら読んだことを思い出した。
本当は押入れの奥にある「邪馬台国の秘密」を探し出して確認すれば良いのだけれど、そこまでする元気はなく、だからこのことはまったくの記憶で書くようになってしまう。
神津探偵がベッドに横たわりながら「魏志倭人伝」記載の邪馬台国への行程を解説していく。壱岐国から「また一海を渡る千余里 末盧国に至る 四千戸あり 海山にそうて居る 草木茂盛し行くに前人が見えず」とある個所を読み上げ、「夏の樹は静かなり」と言うその場面に「夏樹静子」本人が登場するのだ。小説のなかに実在の人物が登場するのだが彼女の詳しい役回りまでは覚えていない。
ミステリー作家として位置を確保し、「Wの悲劇」を書いたころだろうか。「石油産業の出光家の御曹司と結婚した」という人物紹介があった、この一点を何という理由もなく記憶に残っていた。
今でも、「魏志倭人伝」の、特に「草木茂盛行不見前人」の一句にさしかかると、条件反射のように、「夏の樹は静かなり」、「夏樹静子」、「出光産業の御曹司」という「三題噺」的なキーワードが思い浮んでしまうのだ。
本書「裁判百年史ものがたり」とは何の関連性もなく、どうでもいいようなことだけど、ふと思い出したので書いてみた。なぜ、こんなことを書いたかと言うと、この本はあまり面白くなかったからだ。

「ミステリーサスペンス顔負け。世を動かした12の法廷ドラマ。裁判はこんなに面白いのか。時代を超えた12の法廷ドラマを夏樹静子が真迫のノンフィクションノベルに」と紹介されている。
「ロシア皇太子襲撃事件・大津事件」「明治天皇暗殺謀議・大逆事件」「帝銀事件」、「松川事件」、「チャタレイ夫人の恋人・猥褻事件」、「八海事件」「永山則夫・連続射殺魔事件」など12の事件の裁判記録が簡潔にまとめられている。
巻末に、初出は「オール讀物」 に連載されたもの、とあってなるほどと納得した。

「松川事件」について。この事件については今までいろいろな本を読んできている。もちろん、広津和郎さんの「松川事件」も、最近の「松川事件・謎の累積(日向 康著・新風舎)」も読んでいる。 
この裁判は昭和24の一審から昭和38年最高裁の判決確定まで5回行われた。一審は20人全員有罪、二審は17人有罪、3人無罪、最高裁大法廷の差戻し判決は17人全員無罪、そして再上告審で被告全員の無罪が確定した。関与した裁判官は延べ22人になるが、判断は無罪説11人、有罪説11人とまったくの同数になるのだ。
無罪という判断のなかには、「疑わしきは被告人の利益に」という判断、「積極的に有罪とするには何かが足りない」という判断、あるいは「消極的に、ではあるが無罪とせざるを得ない」という判断をした裁判官もいただろうということを斟酌すれば、「有罪」の色彩の方が強くなるのかもしれない。
つくづく裁判の難しさ、人を裁くということの難しさを思うのだ、などと言うつもりはまったく無い。
そもそも「人が人を裁く」ということはそういうことだろうと思うのだ。その理不尽さがあるから、だから国家が人に代わって裁くのだ。だから私は裁判員裁判に反対なのだ。理不尽さを払拭できないのなら、「市民」によって裁かれるのではなく、「国家」によって断罪されるべき、と思うのだ。
だが、しかし、「松川事件」の真実とは何であったのだろうか。犯人は誰だったのだろうか。

事件の概要、裁判そのものの顛末、検察側の論告、弁護側の弁論、一審二審最高裁の判決などは、知る必要があればどこかで調べることができることで、私が読みたかった「ミステリーサスペンス顔負けの法廷ドラマ」は期待したほど無かった。
未解決事件の「松川事件」とか「帝銀事件」について、最高裁で判決が確定しているにもかかわらず、真犯人が確定されていない事件について、「裁判記録」を読みこんで、ミステリー作家らしい目の付けどころのようなものを見せてもらえるものという期待があった。
そもそも、そういうことを目的として書かれてものではない、と言われればそれまで、なのだが。
うーん、何と言うか、残念。

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